北大路通りまで出て西へ。
大徳寺の塀に添って参道を上がると、
西陣の氏神様、今宮神社がある。

本殿の西に、織物の祖神「栲幡千千姫命」
(たくはたちぢひめのみこと)を祀る機織社がある。
「栲」は、「たえ」と同じ梶の木の繊維で織った白布を指す。
古代、布の総称としても用いられている。
「幡」は、織物を意味し、命の機織の功を称えた美称という。
「千千」は、「縮」に通じ、織地の精巧さを言ったもの。
と、誠に西陣の氏神様にふさわしい。
手前の絵馬舎には、稲田玉鳳の筆による、
三台の空引き機と九人の職工を描いた絵馬が奉納されていたが、
傷みが激しく、現在は蔵に保管されていて見学はできないという。
西陣織会館に、この絵馬を原型にした、絵馬「高機図」が所蔵されているが、
公開は不定期という。会期に合わせ、ぜひ公開して欲しいと思う。
境内には、神社と西陣の恩人、徳川五代将軍綱吉の母、
桂昌院(お玉)の像が立つ。
お玉は、西陣の織子の出だったので、後年、荒廃した社殿の
修復や、寄進に力を尽くしたという。
東門参道の両側には、名物のあぶり餅屋さんが並ぶ。
西陣で、初めて機を織る、織子さんは、この餅の串を持帰り、
織り始めに使ったと伝わる。
言伝えを尋ねると、“昔のこと”と素気ない。