「ピーニャの糸採と織・蝉の羽を作る」

小瀬木えりの/ピーニャ研究者
ディン&レット/織の継承者
【小瀬木えりの】
同志社大学卒業後、京都大学大学院(社会学)で学び、現在は大阪国際大学(国際コミュニケーション学部)准教授。大学では「文化人類学」、「異文化コミュニケーション」等を教えています。
大学院時代にフィリピン地域研究を志し、フィリピンで多数派を占める低地に住む
キリスト教徒系の人々の間に伝わるパイナップル繊維の織物(ピーニャ)を
研究テーマにとりあげてから約10年が経ちました。
ピーニャ織の拠点となっているパナイ島アクラン州をたびたび訪れ、
伝統の手織物産業に携わる零細起業家とその家族による経営や、
地元の織手さん達の様子を観察してきました。
20世紀末に一時衰滅の危機に瀕していたピーニャという稀少な織物を、
フィリピンの人々はよく復興し、今日まで支え続けてきたと思います。
レクチャーでは、蝉の羽のように軽くて繊細なピーニャの繊維採取と
糸づくりの様子等をご紹介します。
また、ピーニャ織物の産地であるフィリピンのアクラン州から、
ピーニャの最大手で老舗製造業者、デラクルス・ハウス・オブ・ピーニャの
マネージャーのディン、織の継承者で技術指導者でもあるレット姉妹が
来日・参加します。
【ディン】
フィリピンにおけるピーニャ織の伝統技術保持者で最高の織手と認められている母親、スシマ・デラクルスさんの志を受け継ぎ、ピーニャ製造会社「デラクルス・ハウス・オブ・ピーニャ」を経営。
一代で最も優良な零細企業と政府が認めるまでに成長させた女性マネージャー。
かつて、フィリピンに住むベトナム難民の人達を支援するNGOで働いていた経験があり、同僚であった現在のご主人と結婚、力を合わせて、
故郷のピーニャ産業を支える仕事に携わり、今日に至っています。
【レット】
母親のスシマさんの影響で、幼い頃よりピーニャ織を修得し、織の技術指導に活躍。
今日では数少ない技術保持者です。
ディンさんの姉で、妹のディンさんとともにデラクルスの織部門を支える重要な存在。
高齢のため、自ら織るのが難しくなったスシマさんの代わりに、
最高級のピーニャを織り出す黄金の手の持ち主。