中島洋一/絹の古典織物
        レクチャー:11/21(土) 11:00~12:00


古典織物の魅力

古代の染織品には糸の残欠でも捨てられない美しさがある。
それは経年変化を感じさせない素材(絹の光沢)と色彩(天然染料)の美しさである。

それが織物の断片になると文様の美しさが見えてくる。
その美しさの要因は文様に先人のメッセージが込められているからだ。
文様に込められた意味を探っていくと我々が忘れかけている「幸せ」とは何かを教えてくれる。
「五穀豊穣」「子孫繁栄」「延年益寿」など吉祥を願う気持ちである。

私はそのメッセージを織物で表現し残したいと思っている。
私の織物は文化財修理の表装裂として使われてきた。
表装裂は書画の保護と装飾を目的とするがそれらを制作当事の雰囲気で鑑賞させる重要な役目も果たしている。
だからそのメッセージを確実に伝えるため先人の気持ちになり制作する。

しかし私の古典織物は復元模造ではない。 
何故なら完全な復元は不可能だからだ。
だとしてもできるだけ当時の素材に近いものを使用することを心がけている。
古代蚕品種に近い繭を選び、機械でなく手で繰糸した糸を使い染料は天然染料を使う、製織は当然手織りである。



文様の形にはこだわる。
そこには先人の心があるからだ。
先人の心のこもった古典織物は時代を越え私に訴えかけてくる。
だから私は断片でも捨てられない織物を作りたいと思っている。


先人の思いを心のこもった仕事で後世に残すため私はこれからも織り続ける。